■ボーイスカウトとは
ボーイスカウトとは、自立心ある健全な青少年を育てる、世界的な社会教育運動のひとつです。少年たちの好奇心や探究心にこたえる活動を通して、心身ともにバランスの取れた人格の形成を目指しています。
ボーイスカウトの創始者ベーデン-パウエル卿が考案したスカウティングは、少年たちにとって「楽しいゲーム」であり、いつも愉快な笑い声が満ち、スカウト達を忙しく活動させ、快活にします。そして「実際に行うことによって学ぶ」面白い活動なのです。
■ ボーイスカウト運動が目指すこと~より良き社会人を目指して
少年期、青年期の問題が社会の関心と注目を集めている今、子どもたちをよりよい方向に導いていくために、地域社会の教育力に目が向けられています。子どもたちがより良き社会人になるために、「家庭教育」「学校教育」とともに大切なのが「社会教育」です。
社会奉仕活動や、自然の中での体験などを多く取り入れた、ボーイスカウトの様々な活動をとおして、青少年の、健全な心と体の育成に貢献したいと願っています。
スカウト運動は、世界共通のこの目的のもと、『Creating a Better World(より良き社会を作る)』を世界共通の目標として、健全な青少年の育成を行っています。
■ ボーイスカウト運動の始まり
1907年ボーイスカウトの創始者ロバート・ベーデン-パウエル卿はイギリスのブラウンシー島に20人の少年たちを集めて実験キャンプを行いました。そして、このキャンプの体験をもとに、翌年「スカウティング・フォア・ボーイズ」という本を著し、少年たちの旺盛な冒険心や好奇心をキャンプ生活や自然観察、グループでのゲームなどの中で発揮させ、「遊び」を通して少年たちに自立心や、協調性、リーダーシップを身につけさせようとしました。これがボーイスカウト運動の始まりです。
日本では、1922年(大正11年)に「少年団日本連盟」が創立され、世界のスカウト運動への仲間入りを果たしました。これが日本におけるボーイスカウト運動の始まりです。
■ ボーイスカウト運動の組織と構成
ボーイスカウトの活動は、各年齢層に応じ5つの部門により構成されています。
● 小学校入学直前の9月〜 ビーバースカウト
● 小学2年生9月〜 カブスカウト
● 小学5年生9月〜 ボーイスカウト
● 中学3年生9月〜 ベンチャースカウト
● 18歳以上〜25歳 ローバースカウト
なお、平成27年4月より教育規程が改正となり、学年に合わせた以下の区分に変更になります。(旧規程の区分から平成28年4月までに移行となります。)
● 小学1年生〜小学2年生 ビーバースカウト
● 小学3年生〜小学5年生 カブスカウト
● 小学6年生〜中学3年生 ボーイスカウト
● 高校1年生〜高校3年生 ベンチャースカウト
● 18歳以上〜25歳 ローバースカウト
かつては男子だけが参加していたボーイスカウトですが、平成7年以降各部門に女子の参加が認められました。同じユニフォームを着用し、キャンプやゲーム、奉仕活動など一緒に活動しています。
現在、ボーイスカウト日本連盟は全国47都道府県に、それぞれ県連盟を設置し、全国的な活動を展開しながら、地域に根ざした活動を行っています。各県連盟は、おおよそ行政単位ごとに地区を構成し、その下に団・隊が組織されています。
■ ボーイスカウト運動の教育の特徴
ボーイスカウト運動には次のような特徴が上げられます。
1 青少年の自発活動であること
2 青少年が、誠実、勇気、自信、および国際愛と人道主義を把握すること
健康を築くこと
人生に役立つ技能を体得すること
社会に奉仕できること
以上の「人格」「健康」「技能」「奉仕」を4本柱としていること
3 幼児期から青年期にわたる各年齢層に適応するよう、年齢に応じた部門があり、
それぞれのプログラムが一貫していること。
しかし、ボーイスカウト教育が他の青少年団体と異なるところは、そのプログラムにあります。
それは、『「ちかい・おきて」の実践』『班制教育』『進歩制度』『野外活動』を
4つの柱としていることです。
ちかいとおきて
ボーイスカウト教育は、どのようなときにも、どのような場でも、すべての活動は「ちかいとおきて」の実践を基礎としています。
「ちかい」は、自分自身に対して誓うものであり、また「スカウトのおきて」は毎日の生活の物差しとして自分の行動を律するものです。
-ちかい-
私は、名誉にかけて、次の3条の実行をちかいます。
1.神(仏)と国とに誠をつくし、おきてを守ります。
1.いつも他の人びとを助けます。
1.からだを強くし、心をすこやかに、徳を養います。
-おきて-
1.スカウトは誠実である。
2.スカウトは友情にあつい。
3.スカウトは礼儀正しい。
4.スカウトは親切である。
5.スカウトは快活である。
6.スカウトは質素である。
7.スカウトは勇敢である。
8.スカウトは感謝の心をもつ
この「ちかい・おきて」は小学6年生以上のボーイスカウト部門から学びますが、カブスカウト部門の「やくそく」、ビーバースカウト部門の「きまり」も、同じ理念のもとに、段階的に「ちかい・おきて」に近づいていくように作られています。
また、「ちかい・おきて」は、国によって若干の表現の違いがありますが、基本的に世界共通です。
小グループ活動(班制教育)
ボーイスカウトの班(カブスカウトの組)は、少人数の少年たちにより編成されます。
■ 遊びの仲間により作られた、異年齢の集団
■ 仲間の一人にリーダーシップをとらせる。
■ 6〜7人のグループで、一人ひとりが、班の運営のために明確な役割を分担する。
ことを特徴としています。班は、少年たちの自治のグループであり、指導力と責任感を養成する場所です。
進歩制度(バッジシステム)とターゲットバッジ・技能章課目
少年には、それぞれ持ってうまれた才能もあれば、成長するにつれて興味を持つようになった趣味やスポーツもあります。一人ひとりが、個性豊かな、可能性を秘めています。少年たちの成長にあわせ、個性を伸ばしながら、社会人として必要な資質をひとつずつ身につけさせるもの、それが進歩制度の考え方です。
進歩制度には、少年が必ず身につけるべき共通のもの(修得課目)と、各人の得意な技能や趣味を伸ばすもの(選択課目)があり、色々な活動を通じて課目の修得に努力していき、規定の課目を完修すると進級章が与えられます。
これに対して選択課目は部門により、カブ部門ではチャレンジ章(40 課目)、ボーイ部門ではターゲットバッジ(53 課目)、ベンチャー部門では技能章(68 課目)とそれぞれ名称が異なりますが、各人の興味や特技に従って選択し、技能を修得する課目が用意されています。
野外活動
ボーイスカウト教育での野外活動は、単なる戸外ではなくもっと広い、もっと大きな自然から学ぶことを意図しています。つまり、大自然を教場としているのです。大自然の中に身をおき、身体を鍛え、技能を磨き、知識と強い意志を身につけます。
中でも大自然の神秘に触れ、人のおよばぬ強大な力を感じるとき、自然と信仰心や感謝の気持ちが芽生え育っていきます。
このような日常のスカウト活動を通じ育っていく信仰心や感謝の気持ちが年齢を重ねていくに従い、より明確な形となり、神(仏)と国(=社会)への努めを果たす社会人になっていくのです。
信仰心について
ボーイスカウトでは、信仰心を大切にしています。
ここで、宗教と信仰の違いについて考えてみたいと思います。
・世界では、生活の中に宗教があります。
宗教は “あなたの信ずる神様や仏様が存在し、その教えに則って生活をしている”ことです。
・日本では、宗教と信仰が一つではない文化があります。
信仰は “神さまや仏さまは分からないけど、その存在を信じ、その恩恵に生かされ
生活ができていることへの「感謝の心」を持ち、「日日の善行」ができる生活をする”ことです。
青少年たちが、世界の様々な国や文化、宗教の違う人々と、それぞれの信仰を尊重しながらよりよい未来を築いて行くためにも、信仰について学ぶことは意義のあることです。
■ ボーイスカウトのモットー「そなえよつねに」
「そなえよつねに」(英語ではBe Prepared)は世界共通のモットーです。備えあれば憂いなし…
どんなことが起こっても、それに対する準備がしっかりできていれば、心配することはありません。
しかし、ボーイスカウトの「そなえよつねに」は、ただリュックに道具をいっぱい詰めて備えると
いうことだけを意味しているのではありません。
どんなことに出会っても、身につけた技能を生かし、今ある道具や知恵を生かし対応できるのがスカウトです。「いつでも準備はできているぞ、さあこい」と言えるよう、日常の訓練に励み、スカウト技能を研究し、繰り返し練習して自分のものにしていくのです。
「心の構え」「体の構え」「技の構え」それが「そなえよつねに」なのです。
■ ボーイスカウトのスローガン「日々の善行」」
1909年の秋のことでした。イギリスの都ロンドンは、この日も一日中濃い霧に包まれていました。アメリカのイリノイ州シカゴからロンドンに来た出版業のウイリアム・ボイス氏は、市の中心部で、ある事務所を探していましたが、道がわからなくて困り果てていました。そのとき霧の中からひとりの少年が近づいてきました。
「何かお役に立つことがありますか?」
と少年は言いました。事務所がわからなくて困っていることがわかると、少年は先に立って、その事務所までボイス氏を案内しました。
ボイス氏は、アメリカ人の習慣で、少年にチップをあげようと、ポケットに手を入れました。しかし、ボイス氏がチップを取り出す前に、少年は勢いよく右手を挙げて敬礼をしました。
「僕はボーイスカウトです。今日も何か良いことをするつもりでいました。お役に立ててうれしいと思います。スカウトは他の人を助けることで、お礼はもらいません。」
と少年は言いました。少年からボーイスカウトのことを聞いたボイス氏は、用事を済ませてから、少年にボーイスカウトの本部まで案内してもらいました。ボイス氏が少年の名前を聞く前に、少年はもう姿を消していました。
イギリスの本部でボーイスカウトのことを詳しく調べたボイス氏は、アメリカに帰って大統領のタフト氏に話をし、やがて、アメリカでボーイスカウト運動が始められたのです。その少年はどうなったのでしょう。その後誰も知りません。しかし誰も知らないこの少年の小さな善行が、アメリカのたくさんの少年に、ボーイスカウトを伝えるもとになったのです。
■ 世界に拡がるスカウト運動
ボーイスカウト運動の目的・教育システムは世界共通です。現在、世界スカウト機構に161 の国と地域が正式加盟し、約3,000万人が活動しています。人種・宗教・言語など、あらゆる違いを越えて、世界中の青少年の友愛を深めることを目指したスカウト活動が積極的に展開されています。
ボーイスカウトでは各種のキャンプ大会を開催し、スカウトたちはそこで日頃の訓練で培った技能や技術を発揮するとともに、多くの仲間たちと友情を深め合います。
日本の大会の中で最も規模の大きいものは、4年に1度開催される日本ジャンボリーで、全国47都道府県から約2万人のボーイスカウト(中学生年代のスカウト)が一堂に会し、
海外からも約1,000人のスカウトが参加し、相互理解・国際親善を図ります。
そして、世界中のスカウトが参加する大会が世界ジャンボリーです。2011年には、第22回世界ジャンボリーが4万人の参加者によりスウェーデンで開催され、日本からは約1,000人が参加しました。2015年には第23回世界スカウトジャンボリーが山口県きらら浜で開催されることが決定し、世界中から3万人が参加します。
ベンチャー、ローバーになると、世界との交流の機会はさらに増えます。日韓スカウト・フォーラム、日米スカウト・フォーラム(スカウト・フォーラムとはスカウト達が、テーマに基づき意見を交換し合いながら提言をまとめ、交流を深める場です)、日韓ベンチャー大会、アメリカ連盟のフィルモント・トレイルキャンプなどへの参加の機会があります。
みよし2団からも、これらの大会に参加したスカウト達がいます。
ボーイスカウトの仲間になることは、世界中のスカウトの仲間になれるということなのです。これまでに2 億5,000 万人以上の人々が人生の一時期をボーイスカウトとして体験して、それぞれの社会の有能な一員として活躍しています。